第4話「モンゴロイドの正常咬合 ~ 8020運動」
前回までの話を要約すると、歯科人類学的調査結果ではアジア大陸および北米と南米大陸に住む原住民は、上顎前歯が歯の裏面の両端の幅が厚いシャベル型で、 歯列弓は幅広く奥行きの短く、頭蓋歯数が超短頭型を示すモンゴロイド特有の形態的特徴を持っていて、上顎前歯がノミ型で、歯列弓が幅狭く奥行きの長い長頭 型を示すコーカソイド(白人)とは全く異なっていた。したがって、我々日本人を含むモンゴロイドにはモンゴロイド共通の正常咬合を旗印にして矯正治療をおこなう必要があるのである。
そこで、調査によって得られた資料から典型的なモンゴロイドの正常咬合を選んでここに示してみよう。
(写真1)は咬み合わせの正面像、(写真2)はその側 面像、(写真3)は上顎歯列弓、(写真4)は下顎歯列弓である。
写真で解るように、上下の歯列弓はきれいな円弧を画き、正面から見ると上顎の歯が下顎の歯を2、3mm被蓋して、上下の正中線が見事に一致している。
側面では上顎の歯と下顎の歯は互いに1歯対2歯の関係で、完全な咬頭嵌合(こうとうかんごう:ノコギリを2つ合わせたように、ギザギザがぴったりと合ったような咬み合わせのこと。歯の尖った部分が、反対のアゴの歯と歯の間の溝にピッタリと咬み合っている状態)が成立している。これは上下の歯の接触面積は最 大の状態を示しているので、形態的に美しく安定しているばかりでなく、咀嚼(そしゃく)機能、能率も最高に発揮されるわけである。写真のような正常咬合で あれば、当然、口腔清掃予防も理想的に行われるので虫歯や歯周病の予防にもなるだろうし、口腔の形態も理想的な環境になるので発音機能も正しく遂行されるに違いない。
話は変わるが、近年、厚生労働省と日本歯科医師会とは共催事業として「8020運動」を展開し、80歳になっても20本以上の歯を持とうと積極的にキャン ペーンしている。そして、食事毎に歯を磨いて虫歯と歯周病を撲滅すればそれが達成できると主張している。果たして歯を磨けば20本以上歯が残るのであろうか?ここに興味深い報告がある。北海道大学の中村進治名誉教授らが同地区の80歳以上の方々の歯を調査したところ、101歳の男性の方がなんと数本の歯は治療されているものも、上下合わせて32本の歯が全て健全で、しかも咬み合わせが正に典型的な正常咬合を示していたのである(写真5)。つまり、この方は 永久歯咬合完成期(18~20歳)に幸いにも典型的な正常咬合を獲得したために、良く咬み、良く磨いて101歳まで健康な歯を持ち続けることが出来たので はないだろうか。もしもこの方が凸凹の歯並びで不正な咬合であったなら、果たして101歳まで健康長寿を保ち得たか疑問である。恐らく「8020」にも届けなかったであろう。
最近、小子化が話題となっている。少子化が進めば進むほど、少ない子供は全員が正常咬合を獲得して欲しい。そして健康な咀嚼器官で成人を迎えて欲しい。言い換えれば不正咬合はそれまでに矯正治療されていて、正常咬合となって成人を迎えることが望ましい。そうすれば必ずや「8020」は達成されるに違いないだろう。
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